Interlocking’s blog

鉄道信号・模型などなど趣味活録

三井化学専用線の各種設備

廃止まであと1か月となった三井化学専用線の各種設備を確認してきたので、

記事にまとめてみました。

 

三井化学専用線の路線図は以下の通り(図1)。

仮屋川操車場、宮浦操車場と三井化学(株)大牟田工場を結ぶ路線です。

 

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図1:三井化学専用線路線図

 

三井化学専用線というと大正時代に製造の機関車が有名ですが、この路線は希少な設備も多く、廃止するには惜しい路線です。その幾つかをご紹介します。

 

1、仮屋川操車場の機械集中てこ

まず一つ目、仮屋川操車場の機械集中てこ扱所。

 

仮屋川操車場と大牟田駅構内間の貨車入換は、電気転てつ機を使用した一般的な構内ですが、仮屋川操車場構内の一部の転てつ器は扱所より機械てこによる集中扱いとなっています。仮屋川操車場の配線略図はこんな感じ(図2)。

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図2:仮屋川操車場配線略図

転てつ器の番号は説明の便宜上振っています。実際は異なる番号である可能性があります。

1号、2号が機械てこによる転てつ器です。

1号は単独の転てつ器、2号は3動の転てつ器で2ハ号は脱線転てつ器という設備構成です。その他の転てつ器は電気転てつ機又は現場扱いの転てつてこになっています。

鉄管を使用して共用する転てつ器では2動が多いですが、3動の機械転てつ器の転換は相当な力が必要そうです。

構内には発条転てつ器も使用され、入換による転てつ転換の手間を省いた設備になっています。普段の運用では現場転てつ器の転換する姿を見ることはありません。

 

実際に写真で確認してゆきます。

扱所全景はこんな感じ(写真3)。構内を見渡せる高い位置に扱所が設けられています。普段は扱者が常駐しておらず、午前8時~10時ごろの列車が仮屋川操車場へ進出入する時のみ使用されます。

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写真3:扱所全景

 

鉄管は扱所下部から2本延び、転てつ器1、2号まで接続されています(写真4)。

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写真4:扱所から延びる鉄管(列車内から撮影)

まず1号転てつ器を見てみます(写真5)。

転てつ標識が建植されています。

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写真5:転てつ器1号回り

鉄管は直角クランク経由でレール下部を通り、エスケープクランクを通じて転てつ器へ接続されています(写真6)。機械てこと定位・反位の関係でしょうか。

 

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写真6:転てつ器1号付近の鉄管回り

続いて、転てつ器2号付近を見てみます(写真7)。

手前の普通転てつ標識が2ロの転てつ器です。奥には発条転てつ器が見えます。

そのさらに奥はHD300とコキ200が見えますね。

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写真7:転てつ器2号付近

転てつ器2号のうち、2イの転てつ器標識は無いように見えます(写真8)。

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写真8:2イ拡大

2ロは90度クランク・エスケープクランクの構造で動力を伝達し、転換する設備となっています(写真9)。転てつ標識も大型です。

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写真9:2ロ付近

 

2ハは脱線転てつ器のため、転てつ標識も脱線転てつ器用のものが使用されています(写真10)。手前の横に伸びる鉄管は2ロへ接続されるもので、2ハ用は奥から延びています。

 

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写真10:2ハの転てつ標識

これら転てつ器は列車が運休でなければ午前8時ごろに訪問すると転換風景も確認できます。やはり3動の転換は重そうな印象でした。

 

仮屋川操車場は専用線廃止に伴って役目を失うので、設備も廃止となるでしょう。

廃止前に扱所公開は無いでしょうかね。。

 

 以上、仮屋川操車場の機械集中てこについてでした。

 

2、旭町1号踏切

2つ目は旭町1号踏切。三井化学専用線の撮影スポットとしてよく目にしますね。

旭町1号踏切は踏切警手によって昇開式遮断機を操作し、踏切道を遮断する第1種乙踏切です(写真11)。列車が走行する時間帯においては全列車に対して踏切道を遮断し、終列車後の時間帯は踏切警手を配置していません。

 

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写真11:旭町1号踏切

踏切小屋を見てみます(写真12)。

小屋内には非常押ボタンがあり、踏切警手が停止措置できるようになっています。

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写真12:踏切小屋

 

遮断機は中央分離帯で2つに分かれ、線路両側に計4機設備されています。うち踏切小屋に最も近い柱には遮断桿が降下したことを検知する機械スイッチらしきものが取り付けられています(写真13)。

また、この機械スイッチは上部と下部の2か所に設備されており、何らかの制御応答に使用しているものと分かります。

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写真13:遮断桿の検知スイッチ

 

このスイッチの用途について、いくつかの仮説が挙げられました。

旭町第一踏切は踏切動作反応灯を設備しています(写真14)。

そこから、

仮説①:踏切動作反応灯の点灯制御に用いている

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写真14:旭町第一踏切の動作反応灯

 が挙げられます。また、この踏切は踏切信号が設けられているので(写真15)、

仮説②:踏切信号機の制御に使用している

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写真15:旭町第一踏切の踏切信号

 も考えられます。正解が気になるところです。

 

以上、旭町第一踏切についてでした。

 

3、宮浦操車場

最後は宮浦操車場についてです。

三井化学工場へ直結するこの操車場は、機関車・貨車の入換及び留置のため、広い構内になっています(写真16)。

写真奥が仮屋川操車場方面になります。

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写真16:宮浦操車場全景

構内の転てつ器は多くが電気転てつ機化されており、手動の転てつ器は一部のみでした。

電気転てつ機は黄色塗装にされています。一般的には黒色ですが、作業員に対する注意喚起でしょうか(写真17)。

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写真17:黄色塗装の電気転てつ機

宮浦操車場の構内の入換は誘導員を必要とするようです。進路の開通確認は入換標識によって行い、線路表示器によって開通進路を確認します(写真18)。

灯器は希少な淡紫色灯を使用した灯列式入換標識です。

線路表示器で表示される名称は「イエトコ」。名称が可愛いですね。

数字表記ではないところに何か意味はあるのでしょうか。

 

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写真18:淡紫色灯の入換標識

 

そして、各線路には線路別表示灯が設けられ、入換標識を共用しています(写真19)。

構内の入換を信号機で行わない場合、入換標識(線路表示式)が一般的で

灯列式の入換標識と線路別表示灯で運用される駅は少ないのではないでしょうか。

 

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写真19:線路別表示灯の点灯

 

続いて、こちらは構内踏切の「東泉2号踏切」です(写真20)。

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写真20:東泉2号踏切

踏切警報音が「電鈴式」でした(写真21)。

車両の入換をする際や三井化学工場内を出入りする際に鳴動します。

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写真21:電鈴部拡大

 

宮浦操車場での入換は朝から昼ごろまで行われているようです。

電鈴式は良いですね。

電子式でも各社で異なる音を奏でますが、電鈴式は鐘を叩く音が聴くことができ、味があります。

 

以上、宮浦操車場についてでした。

 

まとめ

三井化学専用線が廃止になると聞きつけて、各所を訪問してきました。

車両だけでなく、信号設備も希少なものが多い印象を受けました。

 

専用鉄道は徐々に数を減らしているようで、

廃止になる前に訪問したいところです。

 

それでは。