鉄道模型のレイアウトで作成される駅構内は各製作者の独創的で多様なレイアウトの数々があります。
実物の鉄道から駅構内配線を再現する場合、模型においてはどのような課題があるでしょうか。
今回は2面3線駅を例に取り、綴ってみます。
【目 次】
国鉄形2面3線駅
国鉄線(現JR線)に多い旅客駅である2面3線駅を模型化してみます。
2面3線駅の配線略図を以下に示します。
本線は上下1線ずつある複線の路線です。
1番線は対向式ホーム、2・3番線は島式ホームを使用します。
駅両端をX方、Y方と表記していますが、模型のレイアウト上においてはエンドレスレイアウトにより接続されているとします。
運転方法
列車運転においては、最大3編成を運転させることができます。
常時においては下り本線・上り本線でそれぞれ2編成を運転させておき、中線には3編成目を待機させておくという運転ができます。
図の編成Cは上り列車・下り列車どちらの運転方向にも出発させることができます。
また本線上で車両を入れ換えることで、編成A・Bも中線を経由して転線することができます。
下り線を走行する列車が中線で折り返し、上り列車として運転することも可能です。
X方から進入した列車を中線に進入させ、X方へ折り返し運転をするということもできます。
TOMIXの制御機器を使用して運転する場合
私の家で使用しているレールはTOMIX製品を使用しています。
TOMIX製品で構成した場合の電気配線方法を考えてみます。
レイアウトは複線を想定しているので、パワーパックは2台使用します。
2台のパワーパックを使用する際、それぞれのパワーパックの電気が衝突しないように構成する必要があります。
2面3線の駅ではレールに絶縁を設けなかった場合、ポイントの開通方向によっては以下の経路で2台のパワーパックの電気が衝突してしまいます。
図は下り線から導通し、中線を経由して上り線までの通り道が完成し、電気が衝突している状態を示したものです。この電気の衝突は避けねばなりません。
解決策として、駅構内に絶縁(ギャップ)を設けます。
中線と本線を結ぶ渡り線間に絶縁を設けて、電気的に独立した状態を作ります。
中線の通電制御にはセレクタースイッチボックス 又は ユニバーサルスイッチボックスを組み合わせることで制御します。
www.tomytec.co.jp内部結線は以下のようになっています。この機構を用いてポイントコントロールボックスWと組み合わせれば組めるはずです。
セレクタースイッチボックス・ユニバーサルスイッチボックスは付属の連動パーツ*1を使用することでポイントコントロールボックスと連動して操作することが可能になります。
これを駆使して、中線の通電制御を組んでみます。中線は下り線を走行する列車、上り線を走行する列車がそれぞれ走行します。したがって、2台のパワーパックの通電を選択できるように構成することが必要になります。
ポイントコントロールボックスとユニバーサルスイッチボックスは連動させることができますので、ポイントの開通方向と通電がなるべく連動するようにポイントコントロールボックスより制御するポイントを決めます。
構内の各ポイントは以下のように番号を決めます。
イ・ロで記載されるポイント番号は双動のポイントです。ポイントコントロールボックスは「W」*2を3個使用して転換させます。
11~13番のポイントコントロールボックスに連動パーツを取り付け、セレクタースイッチボックス・ユニバーサルスイッチボックスと連動させます。
11番ポイントと12番ポイントが共に分岐側開通(下り線~中線側開通)の時に中線の通電が下り線となり、12番ポイントが直進側開通・13番ポイントが分岐側開通(上り線~中線側開通)となるときは上り線電源が有効となるように制御します。12番ポイントの開通方向によって、電源を選択するように組み、11番・13番ポイントの開通方向を以て電源出力を確定させます。
電気配線図を示すと以下になります。
上図の通電状態は上り線・下り線共に本線開通の場合を示しています。
下り線から中線へ開通させたい時、11番ポイントと12番ポイントを反位(分岐側開通)させます。通電は以下のようになります。
上り線と中線を開通させたい時は、12番ポイントを定位(直進側開通)、13番ポイントを反位(分岐側開通)にします。通電は以下の通りです。
ちなみに、この電気配線には1つ欠点があります。
それは11・13番ポイントが共に分岐側開通(中線側開通)の場合に正面衝突する危険があることです。渡り線間の絶縁により、電気的ショートは避けられますが、車両は中線に進入できてしまいます。例を下図に示します。
これは扱い者の注意により避ける他に術がありません。確実な正面衝突を防ぐためにはポイント相互間に連鎖関係が必要になります。
連動装置を導入して運転する場合
前章でのTOMIX制御機器の使用方法ではポイント相互間の連鎖関係を持つことが出来なかったために、中線への上下列車の同時進入を発生しうる状況がありました。
これを解決するにはポイント相互間に連鎖関係を持たせる必要があります。
連鎖関係を持つ連動装置を鉄道模型に導入してみます。
ポイント制御のみ連鎖関係を作る
連動装置の概念を導入すると、ポイント相互間に連鎖関係を持つことができ、中線への同時進入を避けることができます。
前章で示したTOMIXの機器のうち、ポイントコントロールボックス・ユニバーサルスイッチボックスを専用機器に置き換えます。
またポイント番号は振り直しを行い、制御しやすくします。
この専用機器はポイント制御とパワーパック電源の切替機能を有し、パソコンと接続してパソコンソフト上で作成した連動情報を元に各ポイントの転換と中線の電源切替を行います。
パソコンソフト上で配線略図を作図し、連鎖関係を作成します。この連鎖関係とは、ポイントの転換制御に進路の概念を導入することです。進路の概念を導入することで危険な方向へポイントが開通制御されることを排除します。進路相互間は排他的で、進路構成中は他方の進路によって同一線路に車両が進入しないようにします。
線路上に配置した「てこ」を操作することにより進路の開通と解除を行います。
進路の開通に併せて中線の電源出力を切替できるように設定し、電源の切替も自動でできるように構成します。下り線から中線に向かって進路設定した場合は、下り線電源を中線に出力します。他方上り線から中線に向かって進路設定した場合は上り線電源にします。
中線に対する電源切替はポイント転換と同時にソフトウェアにより行います。
軌道回路と信号機を追加する
前節ではポイント制御・電源切替のみ連鎖関係を構築しました。
より現実の鉄道に近い環境での運転を再現するには、駅構内に軌道回路・信号機が必要になってきます。
駅構内に軌道回路を設けるために、絶縁を以下のように追加します。
本線から各番線に進入できるように信号機を建植します。
X方からは下り本線・中線に進入できるように下り場内信号機を、Y方からは上り本線・中線に進入できるように建植します。
下り本線、中線、上り本線の各番線には出発信号機を設けて、駅から出発できるようにします。
信号機は軌道回路絶縁の真横に設けるのが基本でありますので、全てを設けると下図のようになります。
絶縁が増え、車両ごとに細かい制御を行うためには従来のパワーパックでの給電・配線では難しくなってきます。
軌道回路単位で車両を制御できるようにレイアウトに接続する機器構成はさらに以下のように改めます。(詳細な配線・機器は省略しています)
パソコン上の配線略図についても、信号設備と軌道回路を追加配置し、信号機の制御と
軌道回路による位置検知の表示をできるように変更します。
信号機を設けたことで、駅構内に閉そく区間が生じます。閉そくの概念導入により1編成しか進入できないようになります。
出発信号機・場内信号機を設けたことで、駅構内への進入・駅構外への進出を再現でき、駅構内の全番線に列車在線により、場内信号機手前で信号待ち、もしくは出発待ちをするといった運転方法も可能になり、運転方法に広がりを持たせることができます。
おわりに
今回は現実の鉄道の配線を鉄道模型のレイアウトに落とし込むとどうなるのか、どう制御するのか?という趣旨で記事にしてみました。
シリーズ化するかもしれないし、しないかもしれません。
ユニバーサルスイッチボックスの組み合わせ次第ではもっと大規模な駅もできるのかもしれません。通電制御回路や電気配線が複雑になるかもですが。。
構内が大規模なら連動装置を導入して連鎖関係を構築してしまった方が誤扱いが少なくなり、メリットが大きいように感じます。
それでは。
免責事項
当記事で紹介した例はあくまでレイアウトプランの一例に過ぎません。当記事を参考にして製作したことにより、なんらかの損失を被ったとしても当方は責任も負いかねますのでご了承ください。製作は自己責任でお願い致します。
2022年6月3日:一部表現の修正
*1:連動パーツについて(リンク記事下部):鉄道模型 TOMIX ポイントコントロールボックス